令和5年度税制改正などで公表されたインボイス制度6つの最新情報を解説

ついに、令和5年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。

これに先立って令和4年 12月23日「令和5年度税制改正の大綱」で、かなり大きな変更点が公表されました。
併せて、令和4年12月2日に成立した「令和4年度第2次補正予算」で、補助金などによる導入支援策も公表されています。
「税金や事務の負担軽減」 「インボイス登録の期間延長」 「補助金などによる支援」などかなり手厚い内容といえるでしょう。

そこでこの記事では、「令和5年度税制改正などによるインボイス制度の最新情報」について解説します。
目前にせまったインボイス制度について理解を深め、今後の参考にしていただければ幸いです。

参考:財務省「税制改正の大綱」
参考:国税庁「インボイス特設サイト」

1.令和5年度税制改正などによるインボイス制度6つの最新情報

「令和5年度税制改正の大綱」に記載されている最新情報は①~④になります。
併せて、「令和4年度第2次補正予算」で新たに追加された施策が、⑤⑥の補助金などによるインボイス制度の導入支援策になります。
これらの最新情報をまとめると、以下の6つになります。

  1. これまで免税事業者の場合、納税額は売上税額の2割でも可
  2. 中小事業者は1万円未満の課税仕入れがインボイス不要
  3. 1万円未満の値引きや返品はインボイス対応不要
  4. インボイス登録申請が令和5年9月30日まで可能に
  5. インボイス登録で持続化補助金50万円上乗せ
  6. 安価な会計ソフトも対象になるようIT導入補助金の補助下限5万円を撤廃

参考:経済産業省「令和4年度第2次補正予算等|インボイス制度への対応に取り組む皆様へ各種支援策のご案内」

2.これまで免税事業者の場合、納税額は売上税額の2割でも可

免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の、税金や事務手続きなどの負担が減らせるように、「売上税額の2割を納税額」とすることができるようになります。
免税事業者は、これまで消費税の支払いが免除されていました。
しかし、インボイス制度がスタートすると、取引先からの要請などで課税事業者(インボイス発行事業者)にならざるを得ないケースも発生します。
また、課税事業者になると支払う消費税を計算する必要もあります。
この計算は課税方法によっては、非常に大変です。
これらの「税金と事務手続き負担」を軽減するための特例措置となります。

対象者 免税事業者からインボイス発行事業者になった方
対象期間 令和5年10月1日~令和8年9月30日の3年間(個人事業主は令和8年分の申告まで対象)
例)売上800万円のサービス業で経費150万円の場合
●消費税:売上分80万円、経費分15万円

①免税事業者の場合:0円
しかし取引先が仕入税額控除出来ない為、取引を断られる可能性も…

 

②インボイス発行事業者になった場合:80万円-15万円=65万円
事務手続きの負担が大きい
 

③簡易課税制度を利用した場合:80万円-40万円=40万円
税金の計算は簡単
※サービス業のみなし仕入率50%
 

④特例措置の場合:80万円×2割=16万円
税金の計算は簡単かつ納税額も少ない

このように特例措置を利用すれば、売上や収入を把握するだけで消費税額の計算ができ、非常に簡単で、また納税額も他の方法よりも納税額が少なくなります。

また、特例を利用するために事前の届出も不要で、申告時に適用するかどうかを選択するだけでよくなっています。
確定申告書に適用するかどうかの選択欄がありますので、そこにチェックをするだけです。

3.中小事業者は1万円未満の課税仕入れがインボイス不要

中小事業者は1万円未満の課税仕入れなどの経費について、帳簿の保存のみ(インボイス不要)で、仕入税額控除ができるようになります。
対象期間は6年間ですが、事務負担の大幅な軽減につながります。

対象者 2年前(基準期間)の課税売上が1億円以下、または1年前の上半期(個人事業主は1~6月)の課税売上が5,000万円以下の方
対象期間 令和5年10月1日~令和11年9月30日の6年間

インボイスが不要であれば、領収書・請求書・レシートなどの証票に関して、「インボイスとインボイス以外の書類」の仕分けが不要になり、事務負担の軽減に結びつきます。

参考:財務省「インボイス制度の改正案に関する資料」

4.1万円未満の値引きや返品はインボイス対応不要

1万円未満の値引きや返品などについて、返還インボイスを交付する必要がなくなります。
振込手数料分を値引き処理する場合も対象です。全ての方が対象で、適用期限はありませんので、継続して実施されることになります。

従来のルールでは、値引きや返品が発生した際の事務手続きが複雑で、事務負担増加が懸念されていました。
1万円未満の少額取引で返還インボイス対応が不要になるのは、事務負担の軽減につながります。

5.インボイス登録申請が令和5年9月30日まで可能に

令和5年10月1日からインボイス制度を適用するには、令和5年3月31日までにインボイス登録申請が必要とされていました。

これが令和5年9月30日までの申請については、令和5年10月1日を登録開始日として登録されることになりました。

ただし、インボイス制度への対応には各種の準備が必要で、登録通知が届くには2週間から1ヵ月程度かかりますので、登録を決めている場合には早めの申請をおすすめします。

6.インボイス登録で持続化補助金50万円上乗せ

免税事業者がインボイス登録した場合には、持続化補助金の補助上限額が一律50万円上乗せされます。

対象者 小規模事業者
補助上限 ・通常枠50万円→100万円
・成長分配強化枠(賃上げや事業規模拡大の取組)200万円→250万円
・新陳代謝枠(創業や後継ぎ候補者等の新たな取組)200万円→250万円
※補助率2/3以内(一部の類型は3/4以内)
補助対象 税理士相談費用、機械装置導入、広報費、開発費、委託費など

 

7.安価な会計ソフトも対象になるようIT導入補助金の補助下限5万円を撤廃

インボイス制度への対応も見据え、IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)で補助下限額5万円が撤廃されました。
これにより安価な会計ソフトなどの購入でも、補助を受けることが可能になります。

対象者 中小企業・小規模事業者など
補助上限 ITツール:~50万円(補助率3/4以内)、50~350万円(補助率2/3以内)
PC・タブレットなど:~10万円(補助率1/2以内)
レジ・発券機など:~20万円(補助率1/2以内)
補助対象 会計ソフトなどのソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、PC・タブレット・レジなどのハードウェア購入費など

 

8.「令和5年度税制改正によるインボイス制度の最新情報」まとめ

令和5年10月1日からスタートするインボイス制度について、心配なのが「税金と事務手続き」の負担が増えることです。

それらの心配事を軽減すべく、令和4年12月23日「令和5年度税制改正」、令和4年12月2日「令和4年度第2次補正予算」などにより、「税金と事務手続き」の負担軽減策とインボイス制度導入支援策が公表されました。

このように着々と、インボイス制度スタートに向けての準備がすすめられています。
目前にせまったインボイス制度について理解を深め、スムーズにスタートできるよう最新情報を入手できるようにしておきましょう。

ただし、やはり新しい制度で、疑問や不安に感じる点もあると思われます。
ご質問や困りごとなどあれば、弊所までお気軽にお問い合わせください。

BESO 吉川 昌宏

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